会田誠×八谷和彦×小谷元彦

 『アートの仕事』出版記念トーク・セッション

        

2005年12月10日、青山ブックセンター本店にて、

アートの仕事』の出版を記念して、著者のうち、

会田誠さん、八谷和彦さん、小谷元彦さんによる

トーク・イヴェントを行いました。

自作解説、お互いへの質問、また観客からの質問にも、

ユーモアたっぷり&真剣に答えてくれています。

実際には、作品解説をもっと長時間やっていただいたり、

八谷さんがカポエィラをやっている映像を見せてくれたり、

などなどありましたが、残念ながら割愛させていただき、

ダイジェスト版を掲載します!
愛すべきダメっ子ぶり炸裂の長男、しっかり者の次男、

そしてやんちゃな末っ子……という感じの

男子3人のトークをお楽しみください!

                                                     Text by 平林 享子

 

 

  

     撮影:松蔭浩之

 

      撮影:松蔭浩之

       撮影:MOTOKO

会田誠   アーティスト 八谷和彦  メディア・アーティスト 小谷元彦   アーティスト 

あいだ まこと。1965 年新潟県生まれ。東芸術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。同大学院美術研究科修了。著書に『青春と変態』『ミュータント花子』(ともに ABC 出版)、作品集に『孤独な惑星 会田誠作品集』(DAN ぼ)、『三十路 会田誠第二作品集』(ABC 出版)がある。2003 年、これまでの活動と創作風景をとらえたドキュメンタリー映画『≒会田誠 無気力大陸』(監督:玉利祐助)が公開された。2005年は夏にロンドン、11月にサンフランシスコで個展を開催。所属するギャラリーはミヅマアートギャラリー

はちや かずひこ。1966 年佐賀県生まれ。九州芸術工科大学画像設計学科卒業。コミュニケーションのツールである〈視聴覚交換マシン〉〈ワールドシステム〉、ジェットエンジン付きスケートボード〈エアボード〉など、藤子・F・不二雄的な発明型装置の作品が多い。メールソフト『ポストペット』の企画者&ディレクターであり、ポストペット関連の企画開発を行う会社「ペットワークス 」の代表でもある。現在は、ひとり乗り飛行機〈オープンスカイ〉プロジェクトに取り組む。

おだに もとひこ。1972 年京都府生まれ。東京芸術大学美術学部彫刻科卒業。同大学院美術研究科修了。1997 年、初個展「Phantom-Limb」(P-HOUSE)を開催。「リヨン・ビエンナーレ(2000年)、「イスタンブール・ビエンナーレ」(2001年)、「光州ビエンナーレ」(2002年)など国際展にも多数参加。2003 年のヴェネツィア・ビエンナーレでは日本代表として日本館で展示。彫刻をベースに写真や映像作品も発表。所属するギャラリーは山本現代

※会田個展「恋の前厄」は、2005年12月7日〜2006年1月21日まで、ミヅマアートギャラリーで開催。

* 会田誠さん、八谷和彦さん、小谷元彦さんが参加した「GUNDAM 来たるべき未来のために」展は、2005年11月6日〜12月25日まで、上野の森美術館で開催。

            

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――まずは自己紹介をお願いします。

会田 会田誠です。昭和40年生まれの40歳です。既婚です。子供は男の子がひとりいます。よろしくお願いします。

八谷 八谷です。おもに電気を使った作品をつくってます。昭和41年生まれの39歳です。既婚です。子供は女の子がひとりです。よろしくお願いします。

小谷 小谷元彦と申します。昭和47年生まれの33歳です。えーと、未婚です。がんばってしゃべりますので、よろしくお願いします。

会田誠さんの近作紹介

――では、お兄さん順に、会田さんから、最近の作品について解説していただけますか?  

〈愛ちゃん盆栽(松)〉 2005年

     

会田誠×加藤愛

愛ちゃん盆栽(松)〉 

2005年

ミクスト・メディア 

 

Courtesy of  Mizuma Art Gallery  

 

 

 

 

 

   


会田 これは、まだ剪定している途中の写真ですが、今、ミヅマアートギャラリーで個展をやっていて
(会田誠個展「恋の前厄」2005年12月7日〜2006年1月21日)、完成したバージョンを展示しているので、ぜひ見てください。これはまあ、村上隆さんとか、須田悦弘くんとか、チャップマン・ブラザーズを足して3で割ったような、あまりオリジナリティのない作品ですが、盆栽の女の子っていうのも、やってもいいんじゃないかと思いまして。誰がやってもいいけど、誰もやらないなら、俺がやろうかなって。あんまり、個性とかオリジナリティとかってガチガチに考えなくていいんじゃないかなって、自分で自分に言い聞かせてつくりました。女の子の顔は、教え子の加藤愛ちゃんがこういうのを趣味でやってたので、ふたりで合作しました。

ザク(戦争画RETURNS番外編
)〉 2005年

     

会田誠

〈ザク(戦争画RETURNS番外編)〉
2005年 

アクリル絵具、油絵具、パネル、紙

撮影:木奥惠三

 

(c)創通エージェンシー・サンライズ
(c)2005 Aida Makoto

 

 

 


会田 今、上野の森美術館でやってるガンダム展に、この3人とも参加しているんですけど、それに出した絵ですね。これについては、後でまた、なんか言うでしょう(笑)。

〈日本に潜伏中のビン・ラディンと名乗る男からのビデオ〉 2005年

    

会田誠

日本に潜伏中のビン・ラディンと名乗る男からのビデオ〉

2005年

DVD(9分)

 

ourtesy of  Mizuma Art Gallery

 

 

 

会田 まだ続くんですか? あー、イヤな汗がでてきた。これは、今年の夏にロンドンであった展覧会のためにつくったもので。まあ、作品をつくるきっかけというのは、実は単純なことだったりして、後でいろいろ偉そうなことを言ったりしますが、これも単に「会田って、ビン・ラディンにちょっと似てるよね」と言われたことがきっかけです。ちょうど展覧会をやってるときに、ギャラリーの近くで地下鉄爆破テロがあって、中止かなと思ったんですけど、根性のあるキュレイターだったのか、続けてくれましたね。この作品は、最初の3秒見れば十分で。僕は、アート・ヴィデオっていうのは、よそで見ても、退屈なことが多いから、徹底的に退屈でもいいのかなと思ってつくったんだけど。だから、小谷くんの作品とかはPV……PVって何の略だっけ?
小谷 プロモーション・ヴィデオ。
会田 それにも対抗できるように面白く、魅力的につくろうとするのが、小谷くんみたいなスターなんだろうけど。
八谷 スター(笑)。
会田 俺とかは最初から逃げ腰で、「そういう面白さは期待しないで!」って感じです。
八谷 音声はないの?
会田 「わたし、ビン・ラディン」とか言ってる。「ビン・ラディン、潜伏中」とか、ビン・ラディンが、覚えたてのカタコトの日本語でしゃべってるという設定で……(ヴィデオから「わたし、ビン・ラディン」という声が聞こえてくる)。わっ、もうやめましょう! 僕のこの手のくだらない映像を集めた上映会をミヅマでやりますので
(上映会&トークショウ 2006年1月21日)、よろしかったら、来てください。

〈おにぎり仮面の小さすぎる旅〉 2005年

会田誠

おにぎり仮面の小さすぎる旅〉 

2005年

 

※映像作品のためのイメージ写真

 

ourtesy of  Mizuma Art Gallery

 

 

 

 

 

会田 これは、「小さすぎる旅」とか「世界の車窓から」とか、ああいう3分間の旅番組みたいなのをつくろうと思ったんですよね。バックに流れているのは、モーツァルトの交響曲40番の第2楽章なんですけど、東京から出てきたばかりの頃、図書館でLPを借りて毎日聴いてたんです。上京したてで鬱っぽかった頃の、暗い青春のテーマ曲で。僕の鼻歌もかぶってるんですけど、あまり聴こえないですね。
八谷 これ、本人ですよね?
会田 そのはずだったんですが、僕がカメラを動かさないといけなかったで、若いヤツに着せました。第1話「目覚め編」では、おにぎり仮面は、まだ起き上がらないんですね。第2話でやっと起きて、第3話で、やっと玄関を出ます。それで、20話くらいつくるつもりです。これも今、ミヅマの個展の会場で見せております。
八谷 おにぎり仮面、顔が赤いのは、梅干ですか?
会田 明太子と思っていただいてもいいんですが、はい。
八谷 なんで会田くんの話って、こんなに面白いのかな。
会田 面白くないよ! もういいから行こうよ、どんどん!   

八谷和彦さんの近作紹介  

〈オープンスカイ〉 2003年〜                                                

   

八谷和彦

〈オープンスカイ メーヴェ1/2〉 

撮影:森賢一

 

 

 

 

 

 

八谷 ここから先は、笑いはないです。えっとですね、今やってる〈オープンスカイ〉についてお話します。2003年に熊本市現代美術館での個展が急に決まったとき、前からつくってみたかった『風の谷のナウシカ』に出てくるメーヴェをつくってみようと思ったんです。3ヶ月くらいで準備して、まず1/2サイズをつくってみました。今、お見せしている映像ではちゃんと飛んでますけど、この直前に、一度、墜落しちゃって。制作費として300万くらいかかっていて、「300万がパーに……」って思ったんですけど、なんとか修理して、その日の夕方、再度飛ばしている映像ですね。

                     

   

八谷和彦

オープンスカイ M-01〉

撮影:米倉 裕貴

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八谷 今は、本当に人が乗って飛ぶための実寸の飛行機をつくっています。来年、テストフライトをやる予定です。これは、このあいだ、愛知万博に出したときの写真ですね。制作費が結構かかっているプロジェクトなので、万博に参加させてもらったおかげで、大赤字だったのが中赤字になって助かりました。これから、北海道かあるいはオーストラリアとかに行ってテストフライトするんですが、現地で修理というのが難しいので、2機用意しておいて、どっちかが壊れたら、もう1機でテストできるように、2機体制で進行してるんですね。

     

八谷和彦

オープンスカイ M-01〉

撮影:米倉 裕貴

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   
モデルは山田郷美さん。

 

 

 

 

八谷 最終的には機体を展示して、シミュレーターをつくりたいなって思ってます。今、テストパイロットは、僕も含めて4人いて、みんなハンググライダーの経験者です。危険もあるので、経験者じゃないと乗れないんですが、でも、乗りたいという人は多いんで、映像を投影して乗った気分になれる装置をつくろうと思ってます。今、モデルになってもらっているのは、珍しいキノコ舞踊団というダンスカンパニーのダンサーの山田郷美さんです。
パイロットは、体重制限があって50キロ以下の女性です。プロジェクト全体を撮った映像作品もつくってるんですけど、映像にするなら、メーヴェから降りてくるのが男じゃダメだろうっていうのがあって、パイロットは女性なんですけど、自分が乗れないようなものに人を乗せるわけにはいかないので、自分でもハンググライダーの訓練をしたり、最近はカポエィラをトレーニングしたりしてます。カポエィラっていうのは、ブラジルの格闘技なんですけど、なんでやってるかっていうと、墜落したときに、大怪我が中怪我になるように、からだがやわらかいほうが怪我しにくいんじゃないかと思って始めました。

〈サイコ・コミュニケーター・システム〉 2005年

     

ニュータイプテクノロジーラボ

〈サイコ・コミュニケーター・システム〉

Psycho Communicator System 

2005年


(C) NewType Technology lab. 

(C)創通エージェンシー・サンライズ 

 

 

 

 

 

 

八谷 これはガンダム展に出品している作品です。これは僕ひとりでつくってるわけではなくて、「ニュータイプテクノロジーラボ」という名義で、NTTの研究者の人と一緒にチームでやってます。この人たちの研究で面白いのがあって、人間をラジコンでコントロールする技術をNTTの人たちが持ってるんです。それだけだとちょっとヤバい技術なんだけど、面白く使う方法はあるんじゃないかと思っていて、以前からその人たちと組むチャンスを狙ってたんですね。美術の展覧会だと、エンジニアの人にとってはあまり興味のある目標じゃなかったりするんですけど、「ガンダムの展覧会です」って言ったら非常に乗り気になってくれてですね(笑)。ガンダムを見てた世代の人なので、一緒にチームをつくってやることにしました。
サイコミュっていう武器がガンダムの劇中に出てくるんですけど、「その原型になった機械があった」という設定でつくった作品ですね。ニュータイプの適性試験という形態にしてあって、その適性試験をガンダム展の会場で受けることができるという設定です。ふたりで一組のユニットになって、テレパシーでパートナーの動きをコントロールするようなシステムです。原理としては、耳の下に電極をつけるんですけど、三半器官とか前庭器官とかに電気を流すと、本人が意識してなくても重力の知覚とか平衡感覚が狂っちゃうんですね。だから、お酒を飲んだときのように、まっすぐ歩けないないような状況をつくっておいて、もうひとりの人がコントロールする。一応ちゃんとした原理はあるんですけど、あまりそれはバラさずにやってます。宇宙酔いの原因も、重力がないから、重力を知覚する三半器官とか前庭器官が通常どおりに働かなくて起こるんですけど、もしも人間が宇宙に行って、センサーの感度が普通の人よりも高い人が現れて、何らかの信号をキャッチして判断することができれば、テレパシーみたいな形で、相手の意志を知覚できる人が出るんじゃないかっていう仮説を立ててやってるものです。
<オープンスカイ>も<サイコ・コミュニケーター・システム>も、「フィクションのなかにあるものを本当につくっちゃう」というプロジェクトですね。みんなもきっと欲しいと思ってると思うんです。ただ、つくっても売れないから、つくらないだけで(笑)。でも、技術的には可能だったりするんで、それを腕のいいエンジニアと組んで実現するっていうのが、最近の僕の仕事の傾向ですね。理系のアーティストと言われているわりには、実は自分では何もやってなくて、エンジニアの人たちの発想や技術に頼っている感じです。そういった日本のエンジニアがもっている技術を、美術というフィールドでもって、違った形でプレゼンテーションするようなことをやっている傾向がありますね。

小谷元彦さんの近作紹介  

〈エンガルフ〉 1999年 

  

小谷元彦

〈エンガルフ〉 Engulf
1999年
DVD

10分

金沢21世紀美術館蔵

Coutesy of YAMAMOTO GENDAI

 

 

 

 

 

 

 

小谷 僕は彫刻科出身で、自分の核になってるのは彫刻なんです。ただ、自分のなかの彫刻概念を全部つくっていこうとしたときに、彫刻という形態だけじゃなくて、もっといろいろ実験的な表現をしていく必要があったんですね。コンパスの針の中心軸を彫刻に置きながら、どんどん外側に向かって円を描いていくような感じで活動したいと思っていました。
この〈エンガルフ〉は映像作品です。水って彫刻できないので、映像のなかで彫刻してみようと思ったんですね。波打ち際を16ミリのハイスピード・カメラで撮影して、波を3次元加工してカーヴィングするような感覚でつくってます。スローモーションなんですが、涙がゆっくりと溢れ出して流れ落ちる、そのくらいのスピードにしたかった。こらえていた涙が出てしまうみたいな、切ない感じを出せたらいいなと。これがまた非常に退屈な作品で、僕は結構気に入ってるんですけど。これは、天井に映像を投影して、観客には床に寝ころんで見てもらうつもりでつくりました。「おねしょ映像」みたいな感じですね。金沢21世紀美術館に入っているので、今後、また見てもらう機会もあると思います。

〈ナインス・ルーム〉2001年 

  

小谷元彦

〈ナインス・ルーム〉 9th Room

1999年

DVD DVDデッキ、スクリーン、鏡、スピーカー他 

5分16秒

豊田市立美術館蔵

撮影:木奥惠三

Coutesy of YAMAMOTO GENDAI

 

 

 

 

 

 

 

               ※4面のスクリーンに、天井と床が鏡張りになった立方体の装置。観客はその中に入って映像と音を体感する。

小谷 京都に養源院というお寺があって、まだ行かれたことがない方は、ぜひ一度行っていただきたいんですけど、そこに血天井というのがあるんですね。詳しくは『アートの仕事』のなかでしゃべってますけど、本で言ってないことを話すと、僕は、いつも作品のコンセプトはひとつだけじゃなくて、いろんなコンセプトが積み重なって重層的になるようにしてるんです。この作品の場合、「眼球のなかに入る」というのをコンセプトのひとつにしてました。この箱自体が眼球をイメージしたものとして考えていて、見る側は眼球に入りながら、眼球を見るというシステムを考えてました。出てくる画像に眼や牛の目玉(画像で透明な部分)を切り裂いた映像があるのはそのためです。だからこのシステムは、本来は立方体ではなく、巨大な球体がベストなんですよ。自分の血をシャボン玉にした映像は、眼を閉じたときに見える瞼の血管のイメージです。滝の映像は大量の涙のようなイメージなんですが、こういう感じで目の前に水がしたたり落ちてくるような光景って、眠る瞬間にたまに見たりするんですね。
八谷 眠る前に?
小谷 こういう怖い感じを受けるときがあるんです。あと、4、1とか5、1チャンネルサラウンドって彫刻的な音響効果だと思ったし、この当時、美術業界では見られなかったんで、やるなら今しかないって思ったのも、この作品の制作の動機になってました。

〈ジャッカル〉 2005年                                

 

小谷元彦 〈ジャッカル〉 Jackal    2004-2005年

DVD作品  2分28秒

写真作品 2点組 レーザープリント 各521x815mm               Coutesy of YAMAMOTO GENDAI

 

小谷 これは『ストーリーテラーズ』(森美術館)という展覧会のためにつくった映像作品です。ジオラマをつくって、犬を少しずつ動かしてコマ撮りしてます。自分では「風景彫刻とは何か」「彫刻にとってアニミズムとは何か」という問題に対する実験としてつくったんですね。左の画面には家の風景が映っていて、朝から夜になったり、天候が変わったりして、時間がどんどん推移していきます。そのあいだ、右側の画面では、室内で犬がグルグル回っているという、すごくミニマルな作品です。

〈胸いっぱいの愛を〉 2005年                                 

  

小谷元彦

〈胸いっぱいの愛を〉(部分) 

Whole Lotta Love

レーザープリント 3点組

各2200x1780mm(プリント・サイズ)

 

(C)創通エージェンシー・サンライズ

(C)2005 Motohiko Odani

 

 

 

 

 

 

 

小谷 ガンダム展のオファーをいただいたときに、こういう展覧会の場合、アイデアが瞬発的に出ないとダメだと思ったんですね。で、アイデアがすぐに浮かんだので、引き受けました。マチルダ・アジャンのイメージを使って、戦争祭壇画をつくりたいと思ったんです。中央に女性像、その左右に兵士の死体をお供え物のように配置して、写真でもって神社仏閣の祭壇のようなインスタレーションをつくることにしました。中央の女神像は、聖母マリア的なイメージだけでなく、広隆寺や中宮寺の弥勒菩薩像にヒントを得ました。あと、マチルダは婚約してたので『エマニエル夫人』のイメージもあるなと。『愛の嵐』のイメージもあるなと。そこらへんからエッセンスを引き出して、センターのイメージを決めました。左右に配する兵士の死体ですが、これは、福沢一郎の〈敗戦群像〉という絵からものすごく影響を受けてます。地平線の雰囲気とか、しっちゃかめっちゃかになってる死体のかたまり感とか。死体の顔面変形は、山下菊二の戦争画を念頭に置いてつくりました。このくらいの顔面変形は描かないと、戦争という問題を深くとらえられない。いずれにしても、戦争を体験しているわけじゃないので、本当に深くはとらえられないんですけど。戦争を題材として、作品にする以上、中途半端な変化球でなく、ストレートな球を投げると決めました。
メイキングの様子をデジカメで撮ってあるので、それをお見せしていきます。スタジオでの撮影に入る前に、下準備がいくつかありまして。モデルは、こうやって面接して彼女に決めました。背景の風景は、中国に2回撮影に行ってます。
八谷 そこまでやってたんだ!
小谷 映画『英雄〜HERO〜』のロケ地もなった魔鬼城という砂漠があって、そこへ撮影に行きました。1回目は6×7のカメラを持っていたんですけど、もっと大きいカメラで撮ったほうがいいなと思って、もう1回行って、4×5で撮り直しました。それから骸骨。これは僕、毎日、石膏で型を取ってましたね。最終的には、400個くらい取ったんですけど。
会田 CGじゃなかったんだ……。
八谷 僕もCGだと思ってた。
小谷 バカな労働をやってしまいまして(笑)。
八谷 アシスタントに任せるとかは?
小谷 手伝ってもらったりしたんですけど、ほぼ自分でやってましたね。
八谷 何日間?
小谷 1ヶ月くらいかかりました。
八谷 来る日も来る日も骸骨つくって?
小谷 骸骨を複製するという、このミニマルな行為自体が作品になるなと思いながら。実際なってませんけど(苦笑)。僕のスタジオは廃墟みたいなところなんで、骸骨を積み上げてあるとリアルなんですよね、カタコンベみたいで。
で、いよいよスタジオ撮影なんですが、実際にはこんなふうにブルーバックで撮影してます。
八谷 瓦礫もよくつくってありましたよね。
小谷 これは知り合いの美術さんに頼んで、やってもらいました。
八谷 モデルの女性には、足の組み方とか、かなり細かく指示したんですか?
小谷 それがですね、細かく指示はしたんですが、微妙に頭のなかにあるイメージとズレていて……どうしよう!ってなってまして……。
八谷 さっきあれだけ『エマニエル夫人』とか参考にしてたのに(笑)。
小谷 「どんな感じで座ればいいの?」って聞かれて、「威張った感じで……」とか言ってたら、彼女がポーズを決めてくれたんですね。次は死体の兵士たちの撮影です。15人くらいに来てもらって。特殊メイクさんを呼んでやってもらったんですけど、やっぱりそのキャラクターに合った感じに仕上げていくんですよね。撮影中は、こんな感じなんで(みんなが死体になってる)、微妙なテンションなんですけどね。「死体部」みたいな感じで。みんな、それぞれ自分で自分の死に方を演じてくれてるんですよ。撮影後に写真をチェックしていくと、各々が死のイメージを毎回趣向を凝らして細かく演じてやってくれているがわかって爆笑しました。毎回眼を見開いてこっちを見てる、死体というよりもほぼゾンビがいたりとか。でも、その一方では、福知山線の脱線事故が起こって、現実に大量死が起こった映像を目の当たりにして、「こんなことをフィクションでやってもいいのだろうか?」って悩んだこともありましたね……。いい経験でした。こうやって、実際に積み重なって山になってもらいました。これは、誰が下になるかで、俺はイヤだ!とかって盛り上がってるところですね。
こんなふうに撮影して、その場でリアルタイム合成していきました。画格が合うかどうかとか、その場でチェックしないといけないので。ご覧の通り、最終的には1つのデータが1、36GBとかあるんで、重くて重くてしょうがなくて。1つの画像を開くだけで、コンピュータが「ぐううううっー」ってなってるんですよ。
その後は、CGの作業です。死体役の頭部の傾きの角度に合わせて、頭蓋骨の3Dデータをスキャンして、死体の頭のなかに入れて彫りこんでいったりとか、そういう作業を繰り返していきました。特殊メイクでも完全にはつくりきれなかったので、死体の顔のディティールをつくったり。
八谷 中国に2回も撮影に行ってたのは知らなかったんで、ビックリしました。だいたい、骸骨はCGだと思ってましたからね。
小谷 デジタルを使うなら、アナログなこともやらないと、意味がないと思うんで。
八谷 こういうメイキングのことも、もっと言ったほうがよかったですね。ガンダム・ファンって、プラモから入っている人も多いから親近感を抱くと思う。キャストで複製しているのと同じだ、みたいに。
――会田さんはどうですか?
会田 僕も若い頃に、特殊メイクとか、美術さんと一緒に仕事するなんてことを夢想してたんだけど、実際やろうとすると腰が重くてね。いやぁ、それができる小谷くんが羨ましいなと、今見ながら思った。小谷くんの作品を見てると、「これは俺がつくりたかった!」と思うものが結構ありますね。でも僕は、SM趣味は全然ないんだけど。
小谷 僕はありますね。
八谷 美少女好きっていうジャンルだと……
会田 3人、一緒だよね。
八谷 えっ、俺も入るの?
小谷 八谷さんが一番だと思いますよ。
会田 業界ではそうなってるよ! ロリコンでは、(八谷さんを指差して)1位、(自分を指差して)2位だよ。
八谷 えっ、そうなの? 
会田 八谷くんも小谷くんも、ふたりとも準備とか、下ごしらえをちゃんとやるよね。八谷くんの〈オープンスカイ〉なんて、ずっと下ごしらえみたいなもんじゃない。
八谷 あれは下ごしらえをずっと見せてるという。
会田 いやぁ、ふたりとも大人だなと思って。僕も、絵とかだと3ヶ月くらいかかるのもあるけど、それでもイライラしてね。〈おにぎり仮面〉の撮影なんて、3話あるけど、1時間くらいだったな。
八谷 3話合わせて1時間?
会田 うん。編集は、妻と一晩でやったし。最近どんどん、そうじゃないとダメになってきてて。どんどんそういう人間になってるみたいで、大丈夫かなと思って。
八谷 会田くんは多作だよね。
会田 でも、ふたりみたいな人がいればいるほど、俺はもっとどんどん制作時間を10分とか5分とかに挑戦していったほうがいいのかなと思う。いやぁ、勉強になるね。 

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会田誠さん、八谷和彦さん、小谷元彦さんに加え、

池松江美さん、小林孝亘さん、都築響一さん、

グルーヴィジョンズ伊藤弘さん、MOTOKOさんによる

レクチャー&インタヴューを収録した『アートの仕事』

詳細は『アートの仕事』のページをご覧ください。

 

 

 

 

 

 

           

 

 

 

 

                            

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